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東京高等裁判所 昭和46年(ネ)2470号 決定

控訴人

日本通運株式会社

被控訴人

被控訴人

東京都

右当事者間の不当利得返還請求控訴事件について、当裁判所は控訴人の文書提出命令申立を理由ありと認め、次のとおり決定する。

主文

被控訴人国は訴外辰美産業株式会社の昭和四〇年四月六日から昭和四一年二月二八日迄の、及び昭和四一年三月一日から昭和四二年二月二八日迄の各事業年度(一年一事業年度)毎の法人税確定申告書並びにこれらに関する更正処分の法人税決議書を

被控訴人東京都は訴外辰美産業株式会社の右各事業年度の法人事業税、同都民税の確定申告書並びに更正処分の決議書をそれぞれ本決定送達の日から一四日内に当裁判所に提出することを命ずる。

(裁判長裁判官 桑原正憲 裁判官 西岡悌次 裁判官 青山達)

(参考) 文書提出命令の申立

控訴人 日本通運株式会社

被控訴人 国

外一名

右当事者間の御庁昭和四六年(ネ)第二四七〇号不当利得返還請求控訴事件について、控訴人は、被控訴人らに対し、左記の文書の提出を命ぜられることを求める。

一、文書の表示並びに趣旨

1. 被控訴人 国に対する申立分

昭和四〇年四月六日から同四一年二月二八日まで及び同四一年三月一日から同四二年二月二八日までの各事業年度(一年一事業年度)毎の辰美産業株式会社の法人税確定申告書並びにこれらに関する更正処分の法人税決議書(二冊)

2. 被控訴人東京都に対する申立分

右各事業年度の同法人の事業税、同都民税の確定申告書並びに更正処分の決議書

二、文書の所持者

1. 被控訴人国に対する申立分 芝税務署長

2. 同東京都に対する申立分 東京都知事

三、申立の理由並びに証すべき事実

1. 原判決事実摘示のとおり訴外辰美産業は昭和四三年三月頃事実上倒産し、現在店舗従業員等物的、人的設備は皆無であつて、唯登記簿上存在しているにすぎない。

2. 控訴人は訴外会社に対し、履行不能による損害賠償として金六一四、四六八、二一二円を請求する権利があり、その損害賠償請求訴訟中であつて訴外会社とは対立関係にあり、且つ訴外会社はいわゆる日通事件に関連し、法人税等確定申告並びにこれらの更正処分関係書類を廃棄してしまつたとのことであり、現在その事実関係を立証する書類は、芝税務署長及び都知事の所持する訴外会社の法人税等決議書しか存しない。

3. 控訴人は訴外会社に代位して、昭和四四年九月一日芝税務署長に対し、更正の請求をしたが、同署長は控訴人の代位権を認めず、且つ控訴人の質問に対して一切の説明をしない。

4. 控訴人が当時、訴外会社の課税処分に関与した第三者からの伝聞によると、芝税務署長は、前記末履行金額もすべて売上の収益が発生したものとして課税したとのことであるが、控訴人主張のとおり右課税処分は違法である。

四、文書提出義務の根拠

民訴法第三一二条第三号により右被控訴人はこれが提出をなすべき義務がある。

右のとおり申立致します。

昭和四七年一〇月 日

右控訴人代理人

弁護士 大野重信

同 輿石睦

東京高等裁判所

第七民事部 御中

昭和四六年(ネ)第二四七〇号

控訴人 日本通運株式会社

国 ほか一名

昭和四八年二月 日

被告国指定代理人

山田二郎

高橋健吉

磯喜義

宮崎宏望

東京高等裁判所第七民事部

御中

文書提出命令の申立に対する意見

控訴人の昭和四七年一〇月付文書提出命令の申立は失当なものである。

一、必要性を欠くことについて

納付された税金の不当利得返還請求は、納税義務が既に確定している以上、その確定している納税義務が取消されるか、又は当然無効なものと観念されるものでなければ、その返還を請求できないと解すべきである。ところで、訴外辰美産業株式会社の昭和四〇年四月六日から昭和四一年二月二八日までの事業年度分法人税は、訴外芝税務署長の更正処分により、また、右訴外会社の昭和四一年三月一日から昭和四二年二月二八日までの事業年度分法人税はその確定申告によりそれぞれ既に確定しており、控訴人主張の本件未履行部分の土地代金を収益に計上することは、右更正処分および確定申告を当然に無効とする事由に到底あたらないものである。このことは、既に、被控訴人の昭和四八年一月二九日付準備書面において述べたところである。

したがつて、控訴人の本件不当利得返還請求は、主張自体、明らかに失当であるといわなければならず、控訴人が提出を求めておられる文書(但し、昭和四一年三月一日から昭和四二年二月二八日までの事業年度分法人税については更正処分がなされていないので更正処分の決議書は存在しない。)は、全く不必要なものである。

二、本件文書は民事訴訟法三一二条三号に該当しないことについて

本件申立にかかる更正処分の決議書は、訴外芝税務署長が訴外辰美産業株式会社の所得額を調査した際、もつぱら自己使用のために作成した内部資料にすぎず、又右訴外会社の法人税確定申告書は、訴外会社が確定した決算に基づいて当該事業年度の課税標準税額等を申告した文書に過ぎない。それで、右いずれの文書も、挙証者たる控訴人の利益や法律関係について作成されたものでないことが明らかである。

控訴人の本件申立は理由がないから、却下さるべきである。

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